親戚のオヤジ編
「スノーボード?ああ、あのぐるぐる回りながら飛んだりする例のアレだろ。あのオリンピックの。アレやってるのか?すごいな。」

えっ、ええ、そうですアレですアレ。ただ、オレたちがやってるのはもっとこう・・・スノーボードにもいろんな滑りかたがあるっていうか、なんていうか自然の地形っていうか、深雪とか・・・。

顔見知り編
「あれっ、田口君じゃないですか。なんでこんなセコいスキー場にいるんですか?」
だって、ここ結構楽しめるじゃん。人少ないし。たとえばさあ、ほらあそこに見えるバンク。そうそう、あの段差級に小さいヤツね。あそこに当て込んでから、あの正面のブッシュの切れ目、そうそうそう、ほら人ひとり分くらいしかない。実はあの奥にヒップがあって1mくらいだけど飛べるんだよ。えっ、セコい?そりゃあセコいスキー場ではセコく楽しまなくっちゃね。

ビジネス編
「だからね、市場が何を求めているのか見極めてね、そこにドーンとぶつけるわけよ。コストは徹底的に押さえてさあ。ウチはノウハウ持ってるし、結構抜ける商売になるからさあ。」
ははあ〜なるほどなるほど。じゃあ流行に合わせたモノを作ってバラまくってことですね。いいんじゃないですか。がんばってくださいよ。でもオレだったらそんな商品絶対買いませんけどね。

顔見知り編その2
「うーん、滑ってはいるんだけど、なんかアツくならないっていうか、マンネリぎみで・・・。一緒にやってた仲間もだんだん減ってきてるし。」
ふ〜ん。結構いい滑りしてるように見えるけどねえ・・・。じゃあさ、あそこのキッカーちょっと飛びに行ってみない?いやいや、大丈夫だって、最近のパークはよくできてるから。オーケー、じゃあボトムで!・・・・・・あっ、本当に飛んじゃった・・・。

親戚のオヤジ編その2
「そんな趣味みたいなものじゃあ飯喰ってけないだろう。どうするんだ。一生やってくつもりか」
いやいや、だから一生やり続ける予定の趣味なんですってば。

フェードイン編
「いや〜、こんなにハマるなんて思わなかったしなあ〜。もっと早く始めてればなあ〜、今頃みんなと同じくらい楽しめてるのになあ〜。」
いいじゃん。だってこの先何年もあるんだしさあ。今いくつ?じゃあ75歳まで滑れるとして、え〜と・・・。

ビジネス編その2
「だからね、商売なんだから利益を出さないと意味がないんだけど、その金をこの世界にどうやって還元するかが重要なんだよ。好きなことで飯喰ってるんだからさあ。」
ははあ〜なるほどなるほど。自分の大好きな世界を良くするための文化事業ってわけですね。いいんじゃないですか。がんばってくださいよ。どうせ買うならそういう背景のあるモノを選びたいですからね。

顔見知り編その3
「いや〜、こんなに転びまくったのは始めた頃以来っすよ。見えてなかっただけで、まだまだ知らない楽しみ方がいっぱいあるんですね!」
そりゃあそうだよ。オレなんて20年以上滑っててもまだまだって感じだしさあ。この遊び、みんなが思ってるよりずっとずっとず〜っと奥が深いんじゃないかなあ。

コア風キッズ編
「だってオレ、フリーライディング派だからさあ」
派って言われても・・・。でもさあ競技以外は全部フリーライディングって言うんじゃないのかなあ・・・たぶん。

フェードアウト編
「いや〜、昔はあれだけハマってたのになあ。最後に滑ったのいつだったっけなあ。こう見えてもかなりやってたんだよ、オレも。」
でもね、きっとどんな世界でもさあ、しぶとくやり続けてる人って意外に少ないんじゃないかなあ。まあ、また滑りたくなったらやればいいんじゃない。そのときは付き合うよ。

顔見知り編その4
「で、田口君の滑りって一言でいうと、なにスタイルっていうんですかねえ?」
えっ、そりゃあ縦長の板に横向きに乗るスタイルだよ・・・。

以上ほぼ実話。


田口勝朗 1966年東京生まれ
グリーンクロージング、ヤオヨシレコーズを扱う八百由のボス。ここ数年はゲレンデをフル活用した普通のスノーボーディングの可能性を追求中。世界一滑りっぱなしの社長という説が濃厚。 www.800freedom.biz

(雑誌Fall Line掲載/2006年)