ある年、北海道の森の中でパウダーを爆走。
ある年、アラスカはバルディーズのスティープな斜面を滑降。
ある年、春のゲレンデでウォールをコスりまくり。
全てオリジナルなスタイル全開で、ライダーたちと一緒に。
ほんに一部にしか過ぎないけど、ウエアブランドの社長の動きじゃないよね、これ。
そんなgreen clothing社長、田口勝朗の社長職とは一体?

----green clothingを立ち上げたいきさつは
スノーボード始めた次の冬からストーミーでバイトしながら滑ってたんだけど、働きはじめて5~6年くらい経ったころかな、社長からいいかげん独立してコレを売れって言われて、カナダのブランドを扱いだした。当時は商売に興味も無かったし、何も考えてなかったら適当に売ってたんだよ。だけどまだスノーボードギアって少ない時代だったから2、3年もしたら結構金も貯まってきて、同時にオレとカナダのデザイナーの感覚がズレてきて、日本の意見が多くなっちゃって。だったら自分で作ろうってことで、green clothingを立ち上げることにしたんだよ。最初は何のコンセプトも無かったんだけど、自分の好きな音楽だったりアートだったり、ライダー達の色が加わってきて今の形になってきたって感じだね。

----しかし写真を見る限り、攻めてますね田口さん。
ここ数年は昔よりも攻め心があるんだよ、スノーボードを始めてもう21年になるんだけどね。滑ってなければグリーンをやってる意味無いかなと思って。オレの考え方だよ。例えばハーレーに乗ってないカスタムハーレー屋の社長って説得力無いじゃん。それと同じ感覚でいる。うちはうちの規模だからそういうスタイルって感じなんだろうけど、まぁ結局のところ好きなんだろうねスノーボードが。もしブランドが無くなったとしても滑ることだけは辞めないでしょ。それに、ライダーと一緒にキワどい斜面を攻められるからこそ結ばれる信頼もあるしさ。あまりのナイスセッションにライダーと一緒に感激して涙した経験があるくらいだから。

----green clothingのライダー達ってコイっすね。
そうだね。結果的にだよ、全然意識してるわけじゃないんだけど。オレはスノーボード文化の無い頃から滑ってるから、スケートやサーフィンのビデオを研究したりして、それを自分なりにスノーボードに取り入れてきた。例えばレイバックってのは、バーチカルの角にトラックをかけるでしょ、やっぱソレなんだよ。スノーボードにトラックは無いけどコーピングを削る感覚なの。でも今はスノーボードに一回取り込まれてスノーボード化されたレイバックであり、トリックであるからスノーボードっぽいんだよね。でもソコじゃないんだよ、オレは。その視点で見るとグリーンチームは、一緒にセッションしてきてコイツは渋いわーと思えるヤツばっかり。だから地味だったりするんだよね、たまにはグルグル回せよーって(笑)! でも、ライディングはもちろん、ライフスタイルも含めてそれぞれが自分の中で完全にオリジナルな形を作ってきたヤツらだから、仮にスノーボードを奪ったとしても全く変わらないライフスタイルが残る人間ばっかりなんだ。音楽もファッションもスノーボードから影響を受けてきたわけじゃなく、全て人生のバックグランドから来てる。その内のひとつとしてスノーボードって遊びもしてるヤツらなんだ。向こうもオレの滑りを隅々まで知ってるから、こいつらの前でソソる滑りができなかったらこういうコミューンはできなかったんじゃないかな。面白がって一緒にグルーブしていけるかなって思ってくれてる。ヤツらが濃いのはたまたまなんだよ。オレがそういうのが好きだっただけだろうね。

----田口さんにとって社長職ってのは?
そう聞かれると社長という感覚はほとんどないな。これを言ったらビジネスとしては失格なのかもしれないけど、コミューンを代表する者って感じ。カッコ良く言うとだよ。オレと奥さんの2人でまわしてる会社だけど、そこにライダー達がいて支えてくれる人達がいて、その皆をコミューンと捉えたらそこの代表。経営者ではあるけど皆と対等な位置に立ちながら、その役回りをオレがやってるだけって感じかな。だけど実のところグリーンっていう看板が無かったら今とは滑る環境もずいぶん違ってくるだろうから、オレは経営者としてちゃんと踏ん張っていかなきゃいけないんだよね、本当は。今まであんまりにも考え無さ過ぎたな。経営学をちゃんと学ぶよ(笑)。でも現場がやっぱり好きでさ、っていうよりまずは雪の上にいることがオレの人生の基本だから、これからも常に現場から発信していくつもりだよ。まあ、これはうちのやり方だから良い悪いじゃないけど、ライダーと同じ目線を経験できる経営者はほとんどいないと思うんだよね。だからオレはオレのスタイルでもっともっと草の根にマニアックなスノーボーディングの世界を……、って作りあげるつもりも無いんだよね(笑)。楽しみながらやってきたらこうなったってだけかも・・、体力は使うけど、こんなにラッキーな商売はないかもな。変わらずやってるよ、ずっと。で、しっかり稼げたらライダー全員にバルディーズをおごりたいね!


(フリーペーパー supeRB掲載 2005年)
text: Die Go