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Speed
心と身体を連動させて自分の最高速を更新してみよう。

速ければ速いほど大量のスプレイをぶちまけることができる。ゴリゴリと長時間リップをグラインドすることもできるし、より深いカービングで激しいGを味わったり、より高く遠くまで飛ぶこともできる。だからスピードは速ければ速いほうがいいに決まっているのだ。

スピードを手に入れるにはもちろん技術が必要だ。スピードに対する恐怖心はテクニックが和らげてくれる。しかし最も重要なのは自分の中に設定されている速さの基準を高めるということだ。同じ技術を持った人が同じ道具で同じ斜面を同じスピードで滑っている時、「うわっ、速え〜!」と感じる人もいれば、「なんか遅くて物足りね〜」と感じる人もいる。みな速さの基準が違うのだ。この写真の中のオレは、ダウンヒルワンピに着替えない限りこれ以上スピードが出ない状態(直滑降すればもう少しは出るだろうが・・)、つまりスピードの飽和状態でターンをしている。このような、障害物のほとんどないワイドオープンの中斜面やグルーミングされた朝イチの中級者コースで最高速を出すのは、自分の中にある速さの基準を高く設定することさえできれば、技術的にはそれほど難しいことではない。なかなかいい滑りをする中級者から「どうすれば速く滑れるのか?」と訪ねられることがあるが、心のリミッターを外せば彼らはもっと速く滑れるはずなのだ。身体は動き方を知っているのにアタマが邪魔をしているということだ。一言アドバイスするだけでいままでできなかったことがいきなりできる様になったりするのがなによりの証拠だ。

オレはなにも自分の限界を超えた危険な暴走をしろと言っているのではない。ここで言うスピードとはキロメーターランセ的な絶対速度のことではなく、自分のなかにある「もうこれ以上はムリ」という最高速の基準、つまり自分に対する相対速度のことだ。オレは昨日の自分を追い抜くために限界を高める攻め心がスノーボーディングの奥深さに直結していると思っている。だから無難な滑りを漫然と繰り返すライディングをするつもりはない。

※キロメーターランセ:直滑降で何キロ出せるかを競う競技

田口勝朗
スノーボードウエア”Green Clothing”のボス。8割のスピードでそつなくこなすより、全開で突っ込んでコケる方がカッコいいと言い切る。先日も首都高60km/hオーバーで捕まり、その持論を証明したばかりである。写真は2001年のアラスカで撮影されたコケてない全開ショット。www.800freedom.biz

Rider Katsuro Taguchi Photo Yoshiro Higai


(雑誌Snow Style掲載/2009年)